“木を読む” 江戸木挽き、感嘆の技 / (語り)林 以一 (聞き書き)かくつとむ

小学館文庫 本体533円+税

設計の仕事をする以前(前世とも言う)は、現場で働いていて、自分自身・職人のはしくれだと思っていたから、職人が自分の言葉で語っている本に出会うといちもにも無く買ってしまう。

この本もそんな本達のなかの一冊。

大鋸(おが)だけで製材をする‘木挽き’という職人がいまだに存在しているとは、この本に出会うまでは、うかつにも知らなかった。
日本史の教科書に必ずでている、鋸一丁で角材を縦切している職人だよ!
すごいね、とっくに消滅した職種だと思っていた。
ただし現役は全国で10人余り。昭和4年生まれの著者が若手という絶滅危機状態。
高価な銘木が相手だから需要はある。機械挽きだと無駄(大鋸屑)が多い。
熱のため、杢が熱焼けする・が人力ではそんなことはない。
1分(3mm)厚の板まで挽けちゃう!(職人の技ってすごい)

ただし時間はかかる。
樹齢150年・直径3尺・長さ20尺の欅を二つ割にするには正味1日以上かかる!
それも二人で!!(これもすごい!)

そんな職人しか知り得ない話題が満載。
たとえば大鋸について・木取りについて・いままでに切ってきたいろいろな木種について・・・
読み出したら止まらない、お薦めの一冊です。
(木材についてもっと勉強してからもう一度読みたい本でもある。)

文中の一節
“今はね、設計士が材料をきめるでしょう。
家造りに関してはあの人たちが権限を持っているんですね。
ああ、そこにそんな木を使っちゃおかしいんだけどなあ。
そんな間取りだと、見てくれはよくても使いにくい家になっちゃうんだけどなあ‥‥。
材木屋とか大工がそんなふうに思っても、ヘソ曲げられたら困るから、目をつぶっちゃうんです。
で、周りが先生、先生とたてるから、本人も偉いと勘違いしてしまう。
それで個性という言い方でオブジェ的、自己満足的な設計をしている。
まあ、この人は家を遊びで造っているんじゃないかっていうのもありますよ。
本当の快適性なんかはそっちのけで、姿形にこだわっている。
美しさはあっても、快適性とか、木の特性が死んだような家は、私らにいわせりゃ意味がないんです。
極端な話、今は設計士の図面通りにやったら、梁が組み込めなかった、なんてこともあるんですよ。
机の上の勉強はやったけれど、現場の経験が少ない。そういう人が専門家として仕事をしている。
個性的な図面が引けることと、いい家を設計できることは別なんです。”

きついなあ!でも反論できない。もっと木の事、暮らすという事を勉強しないといけない。

でも、いつか,彼のような職人と仕事がしてみたい。
現場ではこてんぱんにやられちまうんだろうけれど、最高に面白いだろうな。

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