日本の森はなぜ危険なのか〜環境と経済の新林業レポート / 田中淳夫

平凡社新書 760円(税別)

最近は新書ブームです。各社創刊が相次ぎ元気がいい。
書店で平積されている新書も珍しくはなく、おもしろい本に出会う確率が高くなり、歓迎すべきことである。
しかしその一方、“ハズレ”が非常に多い。
テーマ・題材はオッと思わせるのだが、内容、考察に深みが足りない。
将来、出版する本の中間報告書的な、いかにもやっつけ仕事、 2・3日?で書き上げたようなものばかり。
結局、発行点数に著作数が追いついていないということなのか。
でも、それだからこそ闘志をそそられる。駄作の山から本物をみつけてやる!

で、今回お薦めはこの本。タイトルのみで衝動買いしたが、”アタリ”です。

安い外材におされ、日本の林業の低迷・山村の荒廃が叫ばれて久しい。
険しく機械化作業のやりづらい地形、高い人件費、そして林業従事者の高齢化などから、“国産材は高い”があたりまえだと思っていた。(木材の生産・加工・流通は設計者にとってもブラックボックスだったし。)しかしどうもそれだけではないらしい。
作者は、はたして林業は儲かっていたのか?と疑問を呈する。
どうも木を切って儲かったのは第二次大戦後から高度経済成長時代までの一時期だけらしい。
その時期を基準にするから、現在の状況が最悪に見えるのだ。
しかし、もともと木材生産の林業はあまり成立していなかったのだから、現在の山村の暮らしが厳しいのは、山で行う農業や木炭産業の没落により大きな原因があるのではないか。と結論づける。

さらに、現在の日本の森林率は67%に達して有史以来最高になっている。(らしい)
(この数字はアマゾンをかかえるブラジルと同程度。北米のなんと倍です。)
奈良・平安期以降明治時代まで、日本の森林は減少する一方であり、過去の日本は森林が豊富な国ではなかった。(らしい)
だから、‘木を育てる森林育成業’としての林業は大成功している。(らしい)
どうも自然破壊等により森林は減少しているという考えは間違っているようなのだ。

というような出だしで始まって、世界最古吉野林業の秘密・森林ボランティアは森を救えない・日本の焼畑はハイテク技術だ・植えなくても木は生える・紙から木をつくるリサイクル等目からウロコの内容ばかり。

日本の森林・林産業の現在と未来を考えるのには最適な入門書。 お薦めです。

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