用心棒日月抄 / 藤沢周平

新潮文庫 定価552円+税

主人公 青江又八郎は、藩内部の政争に巻き込まれ脱藩、江戸に出て用心棒(日雇い)稼業で生計をたてている。
そこに国許からの刺客が現れ、それを迎え討つというストーリー。
さらに折から起きた赤穂浪士の討ち入り事件をからめて物語りは展開していく。
TV化(役所広司主演だったかな?)されているのでご存知の方も多いと思います。
凛とした剣客小説でありながら、ユーモアにあふれた傑作です。

‘台所に出て、柄杓から水を一杯飲む。冷たい水が腹にしみた。
次に台所の隅の米びつをのぞく。暗い光のなかで、底に散らっばている米を手で掬ってみた。
ーざっと二食。
と又八郎は目算した。それも粥にして二食である。
事態は急迫しているという気がしてくる。
家の中によどんでいる寒気が、よけいにその気分を強めた。’
職にありつけない又八郎の空腹感をリアルに表現している一節です。

なぜこのコーナーにこの作品が登場したかというと、(ネタ切れという説もあるが)文章のはしはしに裏長屋の様子が描かれているからです。
台所・土間・座敷・外の井戸‥‥庶民の暮らしがいきいきと描かれているからです。
両国にある江戸東京博物館の棟割長屋の模型(実物大)が頭にあるからなのかな?

用心棒日月抄は続編として“孤剣”・“刺客”・“凶刃”の3作があります。
さらっと読めて、再読にも再再読にも耐える作品です。
おすすめ!

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